本年度は、〈MS-DOS〉マシンだけでなく、〈マックOS〉の環境でも利用可能な、古写本の画像データベースを目指した。また、大量の画像データを収録するために、ビデオカメラを活用した作業を導入した。 いずれも、当初の予定通りの成果が得られたと思う。特に、Macintoshを活用した画像データベースは、従来の〈MS-DOS〉マシンによる煩雑な作業を飛躍的に改善でき、精度の高い画像が短時間に収集ができた。Macintoshで作成した画像データを〈MS-DOS〉マシンで検索表示できるようにすれば、応用範囲はもっと広がることであろう。ただし、各画像資料の所蔵者の承認が得られていない現在は、画像データの一般への公開は今しばらくはできない状態である。当面は、『源氏物語別本集成』(伊井春樹・小林茂美・伊藤鉄也共編、おうふう)刊行のための資料整理に役立つデータベースとして、今後とも大いに活用していきたい。 なお、データベースを活用した『源氏物語別本集成』作成過程に関連して、〈「国文学とコンピュータ」シンポジウム(第5回)〉(平成5年12月9日 於・国文学研究資料館)のパネル討論で、パネラーの立場から本研究の成果の一部を例示して報告を行なった。 さらには、古写本の影印文字を収録していく中で、字母データベースにも着手した。これは、変体仮名の元の漢字を明確にすることによって、写本の書写者や諸本間の影響関係や、書写された時代を知る資料となるように思われるものである。写本の映像資料と共に、この字母も、新たなデータベースとして育てていきたい。 本研究における、本文と実体と詳細な情報や資料は、源氏物語別本諸本の位相の探究のみならず、他の作品や人文系の分野にも重要な情報となって活用されていくことであろう。
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