研究概要 |
本研究は,統率・東縛理論を中心とした生成文法の諸研究を踏まえて,英語の前置詞句と副詞句が文の構造においてどのような位置を占めるか,また,名詞句移動,Wh移動,LF移動に関してどのような振舞いをするか,さらに,前置詞句や副詞句に正しい意味解釈を与えるためにはどのように考えるべきかという問題の考察し,その解決策を検討した.この目的のため,特に次のような問題を中心に研究を行った. (1)副詞はどのような基準で,どうように下位分類するのが適当であるか. (2)副詞は文構造においてどのような資格をもち,どのような位置に生ずるか. (3)文の中で副詞はどの位置が基本的な位置で,どのような位置には移動することができるか. (4)副詞が移動された際に,どのような場合に副詞の機能と修飾関係に変化が生ずるのか. (5)疑問副詞はWh移動規則とLF移動規則に関してどのような振舞いをするか. (6)副詞に正しい意味解釈を与えるためには,LF表示において副詞をどのように扱うべきか. この研究の中で,次のような点が明らかになった. (1)複数の用法をもつ多義的な副詞は,多くの場合,それと共起する文要素との関連において非曖昧化され,その非曖昧化には,個々の副詞がもっている機能的な可能性と副詞が生じている文全体の意味や文の構成要素の特性との適合性(compatibility)が重要な役割を果たす. (2)複数の用途をもつ多義的な副詞の非曖昧化には,副詞が生じている位置や副詞が文構造において占めている構造的な資格もまた重要な役割を果し,特に文副詞と述部副詞の区別には重要である. (3)副詞は多くの場合文の中で随意的要素であるが,文中の何らかの要素と共起制限をもっており,この共起制限は意味解釈にも重要であるとともに,その共起制限を掘り下げることにより,様々な副詞がある文では用いられるが別の文では用いられないという認可条件として一般化することが可能である.
|