研究概要 |
1.『夜想』への挿絵537点を「彩色の特徴、主要な図像の出現頻度、リパ,クウォールズらの寓意画との関連、イエスの主題」といった点にとくに注目しながら全体構成を検討した。その結果、イエス中心の挿絵が第七夜あたりから急速に増えていることがわかった。 2.この挿絵集は、これまでヤングの批判的注釈に終始していると指摘されてきた。この点を個々の挿絵について検討した。その結果、ブレイクはヤングをストレートに批判しているのではなくむしろヤングが本当にいいたかったことを救い出す、いわば「救済的」(redemptive)な読みをしていることが意外と多いことがわかった。ヤングにみられるこのような特徴は、十八世紀の詩的風土に深く根ざすものであることも明らかになった。 3.ブレイクは挿絵化すべき詩行の頭に※、+等の印を付しているが、挿絵と当該印との相関関係をとくに水彩画と彫版されたもの(第一夜〜第四夜)に限定して調査してみた。するとこの印の位置が水彩画と彫版されたものとで異なっている場合、ブレイクの他の作品(『四つのゾア』など)の影響が反映されていることが多かった。
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