憲法21条2項にいう「通信の秘密」の意義について、本研究では、表現行為の類型に立ち返って、検討した。すなわち、本研究は、21条にいう表現とはコミュニケイション行為をいうとの前提に立って、コミュニケーション行為を媒体別に「言論・出版/プレス/コモン・キャリア/ニュー・メディア」へと分類できることを明らかにする。そのうえで、21条2項にいう「通信」とは右の類型のうち、コモン・キャリアという媒体を指すのではないか、と本研究は考えたのである。そう考えれば、通信とは、利用者が誰であれ、その送受するメッセージを、そのままデータとして送受する媒体をいうことになる。だとすれば、「通信の秘密」の保障とは、単に国家からメッセージを知得・窃用されないことをいうにとどまらず、私法人であるNTTのごとき通信業務従事者による知得・窃用メッセージからの保護を含むはずである。そう解釈してはじめて、電気事業法4条が、通信業務従事者に通信の外形情報まで漏洩・窃用することを禁止している主旨が理解できるであろう。こうした現行法の規定からすれば、NTTがQ2サービス業者のメッセージ内容を知得して、その内容の判断をなすことはできないものと結論せざるを得ない。 そればかりでなく、21条2項は、通信回線に乗せたものであれば、いかなるメッセージであっても、そのままのデータとして送信される自由をも保障しているのではないか、とも解される。そうであるとすれば、NTTがQ2サービス業者のメッセージ内容につき、猥褻であるとか、品位にかけるとかいった理由によって、その役務提供を拒否することは、少なくとも、現行法上は、不可能ではないかと解される。もっとも、通信の自由といえども、絶対無制約ではないことは当然であり、明らかに猥褻なメッセージを送信している業者に、その役務を提供しないでよいとする法改正があれば、話は違ってこよう。この許容できる限界を探ることが今後の課題である。
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