研究概要 |
この研究では,家計の選好についてできるだけ弱い仮定の下で、家計が消費と貯蓄の決定に関して最適化行動をとるという前提の下で、余暇時間の水準が消費と貯蓄の選択に及ぼす影響を実証的に分析した。研究の特徴は、以下の通りである。 1)これまでの多くの消費・貯蓄の実証研究において暗黙に仮定されていた消費と余暇の間の選好に関する弱分離性の仮定を緩めたこと。 2)家計行動を分析するに際して、労働供給行動がすでに決定されたものとして、その下での消費・貯蓄水準の決定に焦点をあてたこと。 3)長期的視野をもったライフ・サイクル-恒常所得仮説に従って行動する家計群のみならず、消費水準が流動資産の水準と可処分所得によって規定されている流動性制約下にある家計群をも考慮したこと。 本研究で得られた結論は以下の通りである。わが国の場合には、テストの結果、消費と余暇の間には弱分離性は成立せず、消費と貯蓄の間の選択行動に対して余暇時間が独立した影響を与えている。具体的にいえば余暇時間は消費に正の効果を有しており、しかも余暇時間に関する消費の弾力性は家計の保有する資産水準(とりわけ実物資産)に依存していることが分かった。
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