研究概要 |
今年度の目的は,現代の世界経済の三大有力経済地域である米国,日本およびEU(EC)間の国際相互経済システムのモデリングと動学ゲーム論的定式化とそのモデルの評価と選択のために,平成5年度に購入された高性能IBM コンピュータとそのアプリケーション・ソフトgaussなどによる最適安定化政策とその逐次推定の計算アルゴリズムの完成過程にある. 国際経済相互依存モデルとしては,周知の2国マンデル・フレミング貿易モデルを基礎に,その計量モデル化と多数国化が可能なように修正し,自国地域の貿易に対する他国地域への貿易の占有率を基に,それぞれの地域の主要貿易相手国を決定し,さらに各地域の経済構造モデル方程式に対する統計的検定によって各地域モデルを決定した.それによるとECと米国との貿易の結びつきは,非常に強く,ECと日本は弱く,逆に日米の結びつきは非常に強いことが実証された.この事実により,各地域のモデルには、大なり小なりの財政・金融政策の効果を表す政策変数が導入され,この問題の動学ゲーム的アプローチを適用する基本的設定の条件が満たされた.したがって,次の段階である各地域内の経済構造をモデル化に研究を移行する段階となっている.現在,ECの構成国とEFTA諸国モデルとその連携モデル,NAFTA諸国モデルと米国との連携モデル,および日本とその周辺アジア地域内モデルの構築とその連携モデルの基本的作業が進行中である.その際に地域グループ内での非協力・協力ゲームの枠組みから得られるナッシュ均衡解とパレート最適解との間の現実的な実行可能解領域での安定均衡が存在するかを「収束(convergence)」の概念を使用してシミュレーション分析を行い,各地域グループ経済および地域内諸国のそれぞれの経済政策が他国のどの様な影響力があるかを検討する理論的枠組みとその実証分析が当面の研究課題となる.
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