研究概要 |
本研究は,「自社株式取得」問題の,単なる抽象的研究だけでなく,経営理論的・実証的・制度的研究を意図するものである。そのような問題意識のもとで展開された研究成果の概要を「自社株式取得と企業財務戦略」として纏めたものを以下に示す。 第1章 序論-「アメリカ企業財務の最近の動向-自社株式取得の増大化傾向」 本章は,既発表のものであるが,本研究の出発点となったものなので,あえて転職した。 第2章,「ダッチ・オ-クションによる自社株式取得」 ダッチ・オ-クション方式の実証研究によって、明らかになった株主の応募入札価格の差異は、MM理論の圧倒的影響下にある、現代企業財務論研究のなかで、より現実的な企業財務の実践理論ないし現実理論構築の重要なてががりとなった。とくに,ダッチ・オ-クションによる自社株式取得においてみられる右上がりの供給曲線の特色とその解釈における株主の異質性の明確化は重要である。 第3章 「自社株式取得方法の三形態のシグナリング効果の比較研究」 自社株式取得の三つの形態-(1)(fixed price tender offer)(2)(dutch auction tender offer)(3)(open market repurchase)-の特色と,プレミアム格差と,その原因を説明する理論の検討を試みた。そして,完全資本市場と株主同質性仮説から,株主の異質性仮説への展開を可能にした。これは,われわれの研究視角に示唆多きものとなった。 第4章 アメリカ大規模企業における従業員持株制度の普及と自社株式取得 従業員持株制度の普及の著しさとその意義の検討。それは,給付建制度から掛金建制度への移行に伴う,固定的給与所得者からリスク負担者への従業員の変容を意味する 第5章 アメリカ上場企業の従業員持株制度の展開とその企業財務論的意義 従業員持株制度の自社株式の取得に伴う株主の富や権利の希薄化とその形態の検討および,その希薄化を相殺する諸制度の活用状況の考察と,総合的財務戦略手段としての従業員持株制度利用の自社株式取得政策を解明した。 第6章 モデル分析による自社株式取得の本質とわが国における自社株式取得の実情 自己株取得の本質をモデル分析によって検討,さらに,わが国における自己株式取得の現状を考察した。わが国での利益消却のための自己株取得が主である。
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