研究概要 |
本研究は,企業行動における秩序性,効率性ならびに公正性を確保するために企業自身が自主的監視機構として設置する内部監査機関の態様と活動の実態について,日本・アメリカ・ドイツの三ケ国におけるそれらを比較し,それぞれの特徴を分析することを目的としている。このような内部監査は,企業が自らの経営管理の必要から生じる内部的要請に応じて,法令等の強制によらず自主的に実施する監査であるから,それは最高経営者が有する監督職能の従業員への委譲によって派生したスタッフ活動である。今日,企業経営の国際化と企業活動の多国籍化に伴い,経営管理方法もまた国際的に共通化する傾向にあるが,これに伴い内部監査機関の態様と活動のあり方も同様の傾向にあるといえる(同質性)。しかし今一度詳細に見れば、それぞれの国の社会的・経済的・法規制的事情を反映した企業のガバナビリティのあり方が異なり,また監査役監査のあり方や外部監査としての公認会計士監査との関係の相違からも,企業における内部監査機関の態様と活動のあり方に相違かあることも事実である(異質性)。まず日本とドイツについてみれば,その異質性については,(1)内部監査部門の所属形態,(2)内部監査部門の人的規模,(3)内部監査部門と監査役監査の関係,(4)内部監査部門と外部監査人(公認会計士)の関係,等においてみられるが,それは各国における企業の経営体質の独自性,法的規制の特質などに起因している。それに対して同質性については,(5)監査の実施体制,-(a)監査チェックリスト・監査バンドブックの利用,(b)内部監査基程の決済・承認レベル,(c)検査テーマの決定方法,(d)監査基本計画書の最高承認者,(d)監査実施通知の名義,(f)内部監査の実施領域,(g)情報システムの専門家の配置,(f)監査チーム編成時の他部門への協力の依頼,(g)監査報告書の作成と配布-等においてみられる。 次にアメリカについてみると,内部監査専門職の新規採用者数は減少傾向にあり,新規採用に際しても,他社で内部監査の経験を有するか,又は公認会計士の資格を有する者を外部から採用し,社内移動により採用する場合には,その前歴には経理,内部監査,コンピュータ処理技術保持者等が多い。また内部監査部門における在籍年数は長期化しており,内部監査部門は将来の管理者の訓練場所として活用されている。企業のトップ・マネジメントは内部監査部門の助言・勧告に対して柔順であり,会計・準拠性監査,業務監査を中心とする内部監査スタッフの社内における評判は概して良いものとなっている。
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