本研究の目的は、通常二重点のみを特異点として持つ三次元ファノ多様体(Fano 3-fold)を詳細に調べることであった。考察の対象は、指数(index)2の第一種(the first species)三次元ファノ多様体で、特異点として通常二重点のみを持つものである。 特異点を持たない非特異三次元ファノ多様体の分類の際には、森の端射線理論(Extremal Ray Theory)が非常に有効であったので、通常二重点を持つ場合にもこれを応用することを考える。非特異の場合は一般の点からの三重射影を森理論を使って解析したが、通常二重点を持つ場合はそこから二重射影を考える。まず、通常二重点がQ-分解的(Q-factorial)かどうかで、小特異点解消(small resolution)が(代数的に)存在したりしなかったりするので、それぞれ分けて考察する。 Q-分解的な場合は小特異点解消が存在せず、特異点を解消すると特異点の逆像として有理二次曲面Sを含む非特異多様体Wが得られ、Sからの二重射影が二重点からの二重射影に他ならない。非特異の場合と同時に、Wはピカール群(Picard group)の段階が2で、Wを(-S)-フロップして得られる非特異多様体は端射線を唯一本持つことがわかるので、その端射線と収縮射像(contraction morphism)を数値的な条件から決定すれば良い。 Q-分解的でない場合は、ヴェイユ因子類群(Weil divisor class group)の階数が2ならば、小特異点解消がちょうど二つ存在し、こうして得られた二つの非特異多様体はフロップで移り合う。それぞれの非特異多様体は、ピカール群の階数が2で端射線を唯一本ずつ持つので、それらの端射線と収縮射像を数値的条件から決定する。 このようにして、通常二重点を持つ3次元ファノ多様体のいくつかの具体例が得られた。
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