研究概要 |
本研究の主要目的は、自然なリーマン計量をもった主束の等長変換群の構造を明らかにすることであった。これについて、本代表者、分担者は、随時セミナーを開き、各自の分担にしたがって問題の分析を行い、また、何回かの出張等を通して、国内の多くの研究者との情報連絡を密にした結果、標構束の等長変換群に関して次のような結果を得た: Mをコンパクト、連絡、向き付け可能なn次元リーマン多様体として、SO(M)をM上の向き付けられた正規直交標構全体のなす束とする。SO(M)はリーマン接続形式ωと標準形式θを用いて自然に定義されるリーマン計量をもつが、このとき、 i(SO(M))=i(M)+o(n)+(Λ^2M)_0 (直和) が成り立つ。ここで、i(SO(M)),i(M)は、それぞれ、SO(M),Mの等長変換全体のなす群のリー環、o(n)は特殊直交群SO(n)のリー環、(Λ^2M)_0はM上の平行な2次形式全体のなすリー環である。但し、n≠1,2,3,4,8であり、Mは正の定曲率空間でないと仮定する。 この結果は、上記の研究目的が的外れでないことを示唆しているように思われ、一般の主束の等長変換群の構造を解明することも可能ではないかと期待が持てる。 尚、この研究目的とは直接関係は無いが、各分担者は、以前の研究成果などを踏まえつつ、本研究の過程で、独自に以下のような研究成果を得た。 剱持は、複素射影空間内の実2次元極小曲面の分類問題についての総合報告を行った。また、3次元ユウクリッド空間内の曲面の中で、平均曲率を保ったまま変形できる曲面を決定した。 尾形は、カスプ特異点に関するヒルツェブルフの予想が、ある場合には正しいことを証明した。 長澤は、解の一意性の無いある半線形熱方程式の解の性質を詳しく調べた。 渡部は、半分裂型ユニタリ群上の尖点的保型形式のテータ級数による持ち上げについて詳しく調べた。
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