研究概要 |
本研究では“接ベクトル空間(=可換リー環)を基にした従来の幾何・解析から巾零リー環を基にした幾何・解析へ"というスローガンのもとに,接フィルター付き多様体を舞台にしてその上の幾何構造,微分方程式について系統的な研究を進めた。そのために内外の諸分野の数学研究者と活発な交流を持った。特に6月にはフランスの諸大学で講演討論を通じて,研究の推進を図った。また10月には,数理解析研究所において「巾零幾何と解析」と題して,研究集会を開催し,本研究のテーマに関係する研究者がいろいろな分野から集り活発に共同研究を進めた。その報告は数理解析研究所講究録として発行予定。 本研究の主な成果と進行状況について述べる: 1.接フィルター付き多様体上の幾何構造の同値問題を扱う統一的な理論を構築し論文として発表した。Monge-Ampere方程式などいくつかの幾何構造に応用し,不変量の計算を遂行中。 2.接フィルター付き多様体上の微分方程式に対する形式理論を確立した(形式的可解性のための条件,重み付き包合性の概念など)。現在論文準備中。 3.重み付きの意味で包合的な微分方程式系は形式Gevrey関数解を持つことを発見し,従来の理論での解析関数のかわり、形式Gevrey関数が我々の理論で重要な役割を担うとの認識に達し,形式Gevrey関数の幾何学的研究を進めたが,まだまだ未開の分野で今後の重要な課題である。 4.接フィルター付き多様体上の準楕円微分方程式についていろいろな観点から考察を進めたが興味深い問題が沢山あり今後の重要な課題である。
|