研究概要 |
関数微分方程式の定性的な研究として,ある種の漸近的な性質をもつ解や周期的な解の存在定理を証明することを主目標とした。既に得られている特に有限遅れをもつ方程式に対する同種の諸結果を再度点検し,それらの証明のどの段階をどのように拡張するべきかを研究した。大筋としてはほゞ望ましい結果が得られているが,未だ細部の点で完全には確定していない個所があり,完成に向けて研究が進行中である。しかしこの研究の途中で副次的に有限遅れをもつ差分微分方程式のある種の周期的な境界値問題の解の存在定理を証明することができた。これは対応する線形差分微分方程式の同種の境界値問題を線形積分方程式に変換する研究の中で得られたものであり,本研究の主目標の完成に近づける要因ともなっている。 一方,この境界値問題に対する数値解析的研究にも一応成功した。この部分については,専門家が出席する定例的な研究会ですでに研究発表を行った。内容は,計算機を利用して,チェビシェア多項式を基底とするガレルキン法で近似解を構成するアルゴリズムを開発し,数式処理用言語マセマティカによりプログラミングし,数値的にも図形的にも出力した。また,得られた近似解についてある付加的数量を求めて,存在が保証された厳密解との誤差も求めた。
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