研究概要 |
一般の(強)定常過程にはエルゴード定理(大数の法則)が成立するが,その収束のスピードは独立確率変数列とは異なり,任意のスピードに対応する定常過程が存在することが知られている。従って重複対数の法則や中心極限定理は一般に成立しない。一方,定常マルチンゲール差列によって生成される定常線形過程は自己回帰,移動平均等統計学の線形システム,とりわけ時系列解析の理論に重要な役割をはたしていると同時に定常過程においてregularと呼ばれる重要なクラスの構成要素でもある。この定常線形過程にはエントロピーなど力学系の理論を適用し,シフトに対して不変な測度のエルゴード分解を通じて,必ずしもエルゴード的でない定常過程に対しても,適当な条件の下で,重複対数の法則や中心極限定理が成立することが研究代表者らによって証明されていたが,更に広い範囲の定常線形過程を含むクラスにも同じ結果が成り立つことが証明された。また,一次元ランダム・ウオークの滞在時間に対して知られている逆正弦法則をカイ2乗検定と組み合わせた検定方法を用いて,代表的な擬似乱数生成法である,線形合同法と最大周期列について統計的検定を行い,ランダム・ウオークのシミュレーションが擬似乱数の統計的検定に有効であることを示した。
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