降着円盤の内縁部の構造や、円盤の振動を調べるのに使える乱流モデルは、非一様、非定常媒質に対して適用できるモデルでなければならない。平成6年度は主としてそのような乱流モデルをつくることに使われた。まず始めは乱流要素の生成消滅をある種の衝突項をもったBoltzmann方程式で記述し、それを使って、乱流のStress Tensorを評価することを行った(Kato and Inagaki)。次に、標準的な手法に帰り、second-order closure近似を使って、非一様、非定常な状態に対して適用できるStress Tensorの表式を求めることを行い、Boltzmann方程式から出発した場合の結果を含むより一般形を導くことに成功した(Kato)。 上記で得られたStress Tensorの表現を使って、降着円盤内縁のトポロジーや円盤の振動に対する安定性を調べた。その結果、音速点のトポロジーが鞍部型でなく、結節点型になる場合はかなり少ないこと、および、上記の新しいStress Tensorの表式を使うと、従来の場合に比べ、振動の成長率はかなり減少するが、不安定性は依然残ることなどが得られた(Kato)。 また、降着円盤では厚さ方向に密度が急激に変化するので、降着円盤の構造を考える場合、密度の非一様性、圧縮性などの効果を考慮に入れた乱流モデルをつくる必要がある。それを行った結果、乱流拡散によるエネルギーの厚さ方向への流れが、円盤での粘性加熱率を考える上に重要であることを指摘した(Nakano and Kato)。 以上は主として、乱流磁場のない場合であったが、乱流磁場のある場合のモデルづくりも行い、現在投稿準備中である。 その他、申請研究課題と直接には関係の無い分野の研究も行い、今年度中に2編出版された(Kato and Tosa;Abramowicz et al.)。
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