研究概要 |
当研究では,超対称大統一模型の枠内で興味深い模型を構成し,宇宙論や直接探索の制限から許されるパラメータ領域を決定することが目的であった。まず模型の構成については,最小統一模型では解決されていない(1)宇宙のバリオン非対称性の生成,(2)パラメータの微調整のない統一模型の構成,の二つの問題に焦点をあてた。(1)に関しては,村山,柳田は右巻きのニュートリノの質量が10^<10>GeV近辺にあれば,そのスカラー成分がインフレーション中に量子ゆらぎによって成長し,冷振動の崩壊によってレプトン非対称性を生成するという機構が働くことを発見した。この右巻きニュートリノの存在はSO(10)統一模型に有利である。また(2)については,SO(10)ではDimopoulos-Wilczekの模型を応用することで,10^<-6>という小さな定数が一つあることを認めさえすれば,微調整なしでヒッグス二重項をシーソー機構によって軽くできることがわかった。 一方期せずしてLEPのデータはより複雑な模型(例えば中間スケールのあるもの)とも整合することがわかり,考えるべきパラメータ領域が一気に広がった。このためパラメータ領域の決定は今後に残された課題となった。 自然界が超対称であったとすれば,超対称粒子が存在するだけでなく,結合定数の間にある種の関係がなりたっていなければならない。日笠は,この関係が超対称性の破れによってどのような影響を受けるかを,スカラークォークの崩壊率を例にとって調べた。この結果は論文として発表すべく準備中である。
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