研究概要 |
本研究は、これまでに超弦理論等を通して築かれてきた理論的基盤、及び豊富な実験的情報をもとに、現象論的諸要請の整合性を通して、超重力理論の中での統一理論の理論構造の解明を目指して進められた。特に、核子の安定性、クォークやレプトンの世代構造と質量の階層性、フレーバー非保存中性カレント過程の抑制等、素粒子の世界の顕著な特性が、超重力理論の中で素粒子の世代を支配するホリゾンタル対称性による、スーパーポテンシャルやケーラーポテンシャルの特徴的な構造の反映である可能性を明らかにした。特にノン・コンパクトなゲージ群SU(1,1)に基づいたホリゾンタル対称性は、自然界における左右対称性、粒子・反粒子対称性、時間反転対称性の破れを、ホリゾンタル対称性の自発的破れとして統一的に理解する画期的自然観を可能にする。ミニマル超対称標準模型はSU(1,1)の無限次元表現によってベクトルライク理論の拡張され、クォークやレプトンのカイラルな構造及び湯川相互作用の階層構造は、SU(1,1)の自発的破れを通して実現される。このミニマルな模型をさらに統一的観点から拡張する試みとして、SU(1,1)とSU(3)×SU(2)×U(1)をノンコンパクトな大統一ゲージ群で統一する可能性を追求している。これは対称性の破れに伴って実現される低エネルギー領域のゲージ対称性と、そこにカイラルに実現される物質場の世代数やそれぞれの量子数に強い相関を与えるものである。また自発的破れを通してカイラルな世界を実現するベクトルライクなホリゾンタル対称性は、その背後にN≧2の超重力理論の拡張された超対称性の存在を強く示唆している。スーパーポテンシャルやケーラーポテンシャルは拡張された超対称性によって強く規定されるので、今後のこの方向の検討は、素粒子の統一理論としての超重力理論の理論的構造の理解に大きな進展を与え得るものと予想される。
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