研究概要 |
本年度前半で,ダイソン型ボソン展開法を中重核の8重極多フォノン状態の解析に用いるための計算機プログラムを開発した.集団的モデル空間を構成するフォノンとして,中性子,陽子それぞれの最低エネルギーの3^-の粒子空孔モードの他に,0^+の粒子対振動,空孔対振動,2^+,4^+,6^+,8^+,10^+の中性子粒子対振動モードを採用出来るように工夫されている.本年度後半では,このプログラムを用いて^<146,148>Gdにおける8重極的集団性の強い励起状態を解析した.その結果明らかになったことは, 1.このように多種類の集団的フォノンを用いたダイソン型ボソン展開法でも,十分実用的である.但し,現在の大型計算機の能力の範囲内では,状態の可能な最大ボソン数は5程度であり,理想的な数(7以上)は不可能である. 2.8^+,10^+の中性子粒子対振動モードは無視出来る. 3.Piiparinen et al.による^<148>Gdにおける8重極的集団性の強い6^+_1,9^-_1,12^+_1状態のエネルギー固有値とB(E3)は,上述のモデル空間内では実験値を十分再現出来ない.即ち,9^-_1,12^+_1のエネルギーが十分下がらない.B(E3)の強度が十分大きく出ない.言い換えると,^<148>Gdの集団性が十分良く再現出来ないということである. この最大の原因の第一は,-parityの対振動(3^-,9^-)を無視したことであり,第二は採ったフォノンの構造が必ずしも最適でないことにあると思われる.第一の点を考慮に入れるため,本年度後半で新しく3^-,9^-の自由度を入れた計算機プログラムを開発し,現在数値計算中である.第二の点に関しては,現在VAD(variation after Dyson mapping)法を適用するためのプログラムを開発中である.なお,上述の本年前半の研究成果はNucl.Phys.に出版が予定されている.
|