研究概要 |
CDW相にあるハロゲン架橋金属錯体の中で,比較的小さなギャップ(1.4eV)を持つPt錯体({Pt(en)_2I}(ClO_4)_2)単結晶において,光伝導度の温度変化および電場依存性を詳しく測定した。光伝導度は,電場にたいして線形な領域では,活性化エネルギー約0.3eVの熱活性化型で変化する。この結果を,光によって生成される格子緩和励起状態(ポーラロンおよび荷電ソリトン)に固有の吸収(光誘起吸収)の温度変化と比較することによって,光キャリアがポーラロンであり,それらが一次元鎖上をホッピング的に運動していることを明らかにした。二分子的再結合モデルによって結果を定量的に解析することにより,ポーラロンおよび荷電ソリトンの生成効率を評価した。両者の生成効率は,励起エネルギーに依存する。ギャップ付近のエネルギーで励起した場合,ポーラロンおよび荷電ソリトンは生成しないが,2eV付近より高エネルギー側で両者の生成効率は上昇し,3.4eVの励起で生成効率は約2%となることがわかった。このような励起エネルギー依存性は,この種の錯体に特有の大きな励起子効果(電子間相互作用)に起因している。 モットハバード相にあるNi錯体({Ni(chxn)_2Br}Br_2,{Ni(chxn)_2Cl}Cl_2)について,光伝導度および光誘起吸収の温度変化を詳しく測定した。両者を比較することによって,光キャリアが上述したPt錯体のものとは異なる種類のポーラロンであることを明らかにした。このポーラロンは,一次元モットハバード系としてははじめて見いだされたものである。
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