研究概要 |
本研究では、Si-MOS二次元電子系の基底ランダウ準位および第一励起ランダウ準位について,その電子状態および電気伝導機構を調べることを目的として,磁場8T,周波数100kHz〜10MHz,温度0.4K〜1.5Kの範囲で,電気伝導率σxxの周波数依存性,及び温度依存性を測定した。 その結果,基底ランダウ準位,および第一励起準位のσxxが極小を示すギャップ領域では,ホッピング伝導が原因と考えられる周波数依存性および温度依存性が観測された。周波数依存性については,バルク半導体のホッピング伝導で観測されているスケール則が,二次元電子系で成り立つことが,初めて実験的に示された。また、温度依存性はT^<-1/3>依存性を示し,可変領域型ホッピング伝導であることを示している。 一方,第一励起準位のσxxのピーク領域では測定電場が10V/mのときにはピーク領域にも周波数依存性が観測されているのに対して,測定電場が40V/mのときには周波数依存性はほとんど見られなかった。これは,10V/mのときには,非局在状態のエネルギー幅が小さく,フェルミ面近傍に局在状態が加わり,この局在状態間のポッピング伝導の寄与があるのに対して,40V/mのときにはフェルミ面近傍の電子のほとんどが非局在状態であり,ピーク付近の伝導が金属的になったと考えられる。この結果は,これまでのピーク領域における伝導機構の考え方に修正を求めるもので,これも新しい知見である。
|