研究概要 |
現実のシリコン表面はステップ,表面欠陥、吸着原子または分子(吸着子)などがシリコン表面の再構成に影響を与え,それ自身興味ある局所的再構成秩序を形成している.これをモンテカルロシミュレーションを用いて解析し,ステップ,表面欠陥,吸着子の効果を研究し,さらには清浄表面の再構成の研究にも貢献しようと言うのがこの研究の目的であった.2年にわたる本研究の成果としては,吸着子によるものが主となった.まず(1)シリコン(100)表面吸着のアルカリ金属原子,特にカリウムとナトリウムの昇温脱離の解析を行った.この系については,昇温脱離の実験がなされている.また幾つかの吸着パターンについて第一原理からの吸着エネルギーの計算がなされている.この理論の結果をもとに,吸着子について適当な模型を仮定すれば、吸着席エネルギー,相互作用定数を定めることが出来る.この模型に対して,モンテカルロシミュレーションを行い,実験結果と比較をし,相互作用についての知見が得た.ついで(2)金吸着シリコン(111)再構成表面についての解析を行った.最近この系の走査トンネル顕微鏡像が得られ,詳しい構造模型が提唱された.特にこの実験を行った研究者の好意で,10枚の走査トンネル顕微鏡像を提供され,吸着金原子が形成する一次元格子的な鎖の統計力学的性質についてモンテカルロシミュレーションを用いてほとんど完全に説明する理論模型を作ることができた.個体表面における異方的な短距離秩序の典型例といえる.関連して,この計算より前に(3)金属表面ではあるがやはり異方的な短距離秩序を示すリチウロ吸着銅(100)表面の動力学シミュレーションの理論計算もおこなった.このほか(4)実験研究者に提供していただいた走査トンネル顕微鏡像の解析により,表面欠陥,ステップ,吸着子に関する主として位置相関に関する多くの情報を得たが,この理論解析は将来の課題である.
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