研究概要 |
強磁性超微粒子(粒径〜50A)では,磁気異方性エネルギーがRTに比べて十分小さいために,粒子の磁気モーメントが熱によってゆらいでいる。このような系では,巨大な磁気モーメントが,通常の1個のスピンのようにふるまうため,その動的な振舞いが興味をもたれている。平成5年度は,シリケートガラ中にマグネタイト・クラスターを極めて希薄に析出させ,そのクラスターの磁気共鳴を調べて,いくつかの重要な成果を得た.この系を調べた目的は,超微粒にみられる重要な効果の1つである表面効果を明らかにする点にあった。この系は,クラスターが弱い磁性媒質中に分散しているため,クラスターと媒質の両方がその磁性に寄与する。我々は,このクラスター系における界面を通した媒質とクラスターとの相互作用を.磁気共鳴の測定結果から求める方法を発見した。平成6年度は.MnZnフェライトをケロシン溶媒に分散させ,それを低温にして凍らせることによって理想的な超常磁性体を実現させ,その磁気共鳴も調べた。超常磁性の動的な磁性については,まだ殆んど手がけられていない。たとえば,超常磁性体の磁気共鳴は,これまで知られている強磁性共鳴でも,また常磁性共鳴でもない。我々は超常磁性状態における磁気共鳴を超常磁性共鳴と名づけて,その振舞いを記述する現象論的理論を構築した。また平成5年度に調べたガラス中の磁性クラスター系の磁気共鳴に関する理論を完成させた。この理論は,ランダム磁性体にもそのまゝ適用でき,20年来の謎であったランダム磁性体に共通にみられる磁気共鳴のシフトも,この理論によって明解に説明することができる。
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