研究概要 |
本研究は希ガスクラスターにおける電子的励起過程,特に励起子の生成過程のクラスターサイズ依存性について,電子エネルギー損失スペクトル法を用いて研究を行うことが目的である.本申請の期間中に,そのための実験装置の設計・製作をほぼ終了し,予備的な実験結果を得た. 実験装置は真空槽,電子エネルギー損失分光装置,超音速クラスター線源,およびクラスターサイズ分布測定用のクラスターイオン検出器により構成されている.我々の開発したクライオポンプ差動排気型クラスター線源を用いて,サイズが500原子数程度のKrクラスターを標的とした電子エネルギー損失スペクトルの測定を行い,Kr原子の4p^55s励起に対応する表面励起子の生成を確認し,クラスターの電子励起過程に特徴的な励起エネルギーのシフトを観測した. このクライオポンプ差動排気型クラスター線源では,低温(30K)での蒸気圧の高い試料ガスを用いることができず,また液体ヘリウムを使用するためにマシンタイムが制限されるという欠点があった.そのため,このクラスター線源を用いた実験と並行して,他の希ガス(Ar,Ne)クラスタービームの生成も可能なクラスター線源を製作し,現在このクラスター線源により生成されるクラスタービームのサイズ分布測定等の性能評価を行っている. 次年度より,新しく製作したクラスタービーム源を用いて以下の研究を計画している. ・Ar,Neクラスターの電子エネルギー損失スペクトルを測定し,クラスター内における電子励起過程に関する系統的な知見を得る. ・Kr,Xeクラスターの負イオンの存在を確認する実験を行い,原子⇒クラスター⇒固体における電子親和力の符号の負から正への変化を実証する.
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