研究概要 |
1)北海道5火山および三宅島の自然電位(SP)測定から,有珠山,北海道駒ヶ岳,三宅島,樽前山では,空間波長1〜2km,振幅が数100mVにのぼる正異常が高知温域が観測された.これは熱水対流上昇域に発生した流動電位に起因する.恵山,雌阿寒岳では顕著な異常が見られなかった.前者はこゝ数10年以内に大規模な噴火を経験しているのに対し,後者は小規模な水蒸気爆発を除いて歴史時代に大きな噴火を起こしていないことが,両者を分ける大きな特徴となっている.しかしながら,地表で観測される熱活動は,例えば駒ヶ岳と比べて雌阿寒岳や恵山の方がはるかに活発である.このような事を考慮すると,単に近年の噴火活動の有無だけに自然電位異常の発現理由をおしつける訳にはゆかない.正のSP異常が観測された3火山には,かなり大規模な断層亀裂が共通して存在している.透水性の高い断層や亀裂は熱水対流系の発達を促進させ,ひいてはSP異常を顕著なものにしたと推定される.今後さらに地下熱水のpH値,地熱活動が熱水対流型か蒸気卓越型(蒸気は電荷を運ばない)か,といった点を考慮して,より詳細な検討が必要であろう.2)火山における自然電位異常を定量的に議論するためには,現位置における流動電位係数を知る必要がある.地下熱水流路,流量等の水理的モデルが確立しているアトサヌプリ-川湯地区での自然電位測定をもとに,現場の流動電位係数を推定することを試みた.結果は従来の実験室で得られた知見を支持する.
|