本研究の目的である深発地震の相転移によるslow presursorが本当に存在するのなら、350-1000秒の非常に長い周期の地震波(地球の自由振動)を解析することにより、原理的に検出可能であることがわかり、現在論文を執筆中である。また、解析に耐えうる精度のよい記録の存在する2つの地震(1982年6月22日、1984年3月6日)について、現在解析中である。予備的な解析によると今のところそのようなprecursorの存在は確認できていない。 実際のデータ解析に当たって、深発地震の起きているマントルの遷移層(深さ400-1000km)の性質を調べる必要が起こってきた。日本全国の微小地震観測網(いわゆるJ-array)のデータを使い、大量のデータの重ね合わせ(stacking)で調べたところ、トンガ地域の遷移層について、次の2つの重要な結果が得られた:(1)920kmの深さに全く新しい地震波速度の不連続面が存在する。(2)いわゆる660km不連続面は沈み込んでいるスラブの影響を受け、沈み込み帯では数十キロメートル深くなっている。この二つの結果は全く新しいものであり、マントルのダイナミクスを考える上で大変重要になってくるはずである。本研究の目的にとっても、これらの結果を考慮した地球モデルを構築してから解析を行わなければならないので、最終的な結論が出るにはもう少し時間がかかる。上記の二つの発見については現在論文を準備中である。
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