研究概要 |
1.1991年3月24日の磁気嵐急始部(SC)とその後に現れた地磁気脈動現象の解析を行い,次の点を明らかにした。(1)このSCは,その立ち上がり部分に短く(1分程度)大きい(柿岡のH成分で202nT)パルスを持つ点で観測史上例を見ない特異なものである,(2)このパルスは,磁気圏全体の急圧縮が昼側から夜側へ伝播した結果生じた,(3)この急圧縮は太陽風の動圧パルスによって生じたと考えられ、したがって,今まで観測されたことのない鋭い(短く大きな)動圧パルスが太陽風中に存在し得る,(4)地球近傍での昼から夜への伝播に関して,このパルスのピークは電離層中の磁気流体波速度で,その立ち上がり部分は電離層-地表間を電磁波速度で伝わったと考えられる,(5)SC後6時間ほどして,周期10分程度の地磁気脈動(Pc-5)が全世界ほぼ同位相で観測された。 2.CRRES衛星は,上記SC生起時にほとんど瞬時に(1分程度で)内部磁気圏放射線帯が形成されたことを観測した。これは,磁気圏急圧縮が磁気圏内荷電粒子加速に重要であることを意味しているので,1924年以降の柿岡のデータを用いて大振幅SCの解析を行った。これまでに,(1)1940年 3月24日に最大振幅SC(H成分:273nT)が観測されており上記1991/3/24現象は第2位にランクされる,(2)1924-1994の期間に振幅100nT以上のSCが12観測されている,(3)太陽黒点数下降期に大振幅SCが起こりやすい,などがわかった。 3.地磁気指数Dstの太陽風動圧平方根に対するスキャッタープロットは右上がりの上限を示す。この上限は磁気圏内リングカレント強度最小レベルに対応し,Dst指数の太陽風動圧依存性を表すと解釈できる。 4.その他,下記の解析も行った。(1)地上で負のSI(sudden impulse)が連続して観測される場合の太陽風構造,(2)磁気圏境界面が静止軌道の内側まで進入する現象,(3)1994年2月21日の磁気嵐現象。
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