研究概要 |
崩壊機構の解明にとって、崩壊発生場における風化状態や地下水の存在形態が極めて重要であるという認識から、長野県西部地震の時に、大規模な崩壊が発生した伝上川源流部,大又川流域,松越の崩壊地で、湧水,渓流水(一部温泉水)の採水を行うとともに、伝上川源流部では白色火山灰,褐色スコリアを採取した。 その結果、(1)〔ΣC-(Cl^-+SO_4^<2->)〕と〔Ca^<2+>+Mg^<2+>〕およびHCO_3^-濃度と高度との関係から、崩壊地の湧水の化学組成の形成には、水-岩石-CO_2系の反応が卓越していた。(2)水と粘土鉱物との関係をGarrelsの方法で解析を行うと、崩壊地の水はHCO_3^-約25mg/l以上から、〔log[Ca^<2+>]+8log[SiO_2]+2pH〕の値は10^<-15>前後となり、これらの水はカオリンとモンモリロナイトとが平衡になっていることを示唆する。(3)X線回折では造岩鉱物として斜長石、普通輝石が顕著で、粘土鉱物としてハロイサイトを含有していた。(4)δD(-79.4〜-77.1/‰),δ^<18>O(-11.8〜-11.4‰)値から伝上川上流域の湧水には、御岳山の火山性の水の寄与は考えられなかった。 なお、伝上川源流部のトリチウムおよび温泉水のトリチウム,^<14>Cは目下鋭意分析中であり、これらのデータが提供され次第、本地域の地下水の滞留時間などを検討する。
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