研究概要 |
本研究は,中生代以降の内生二枚貝類の形態および古生態の進化を,現生二枚貝の生態と形態の関係についての研究と,化石二枚貝の形態と産状の研究に基づいて復元しようとするものであった。平成5年度のみの採択となり,また研究代表者が在外研究で不在となるため,計画を大幅に縮小し,特異な適応を遂げたナミノコガイとキュウシュウナミノコガイを中心とする現生二枚貝の混入行動と形態についての観察を高知県興津郡の小室の浜で実施した。その結果,これら外洋に面した砂浜に適応したナミノコガイ科二枚貝が,殻をそのサイズのわりに厚くさせ,安定性を確保していること,強力な足を持ち,急速な埋没や洗い出しに対し,対処する能力が高いことが明らかになった。また,これらの低質内に潜る貝類の観察法として,海水と屈折率が同じ氷晶石をくだいた砂を用いると,軟X線などの特殊な装置を用いなくても観察が可能なことを確かめた。この方法は,今後,二枚貝に限らず内生型の底生動物の観察に幅広い応用が期待される。 一方,研究分担者を中心に,これまで行ってきた中生代の二枚貝化石群集の記載および総括を行い,その結果は5報の原著論文として報告した。この作業の中で,淡水性の二枚貝であるTrigonioidesが,生息位置で保存された産状が発見された。現生の淡水二枚貝の生態との類似から,この方向が古流向を示すことが推定され,古地理の復元にも役立つことが示された。今後は,これらの断片的な情報を総合し,中生代以降の二枚貝についての通覧し得る形のまとめを行うことが必要である。
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