日本の上部ペルム系の有孔虫生層序を確立し、有孔虫群集組成の特性と時空分布を明らかにする一連の研究の第一年度として、関東山地の五日市北方、熊本県のきゅう球磨層、大分県の津久見石灰岩で並びに予察的に宮崎県の高千穂地域で、野外地質調査・サンプリング・石灰岩薄片の作製・検鏡を行った。 五日市北方では、6地点から16科34属47種の有孔虫化石を識別した。これらは指標種と構成種の違いから年代の異なる2つの群集に分けられ、これまでの研究結果と照らし合わせてみても、質・量ともに日本の後期ペルム紀の模式的な群集を代表しているど思われる。五日市北方以外の地域では、有孔虫化石の産出量が少ないこともあり、種の層位学的分布・群集組式の特性などの詳細は今後の成果に期待される。野外での石灰岩の産状と岩相の鏡下観察などから、筆者の予想通り、津久見と高千穂の石灰岩は海山起源であることは疑いない。五日市北方や球磨層の陸棚型の層相とは明らかに異なる。従来、津久見では上部ペルム系と下部三畳系は整合一連と考えられていたが、両者は著しい煎断変形を伴った黒色粘板岩を介して断層で接していることが判明した。球磨層では最上位化石層とされた灰色石灰岩のさらに上位の層準に含化石灰岩石礫岩が存在する。 室内作業は現在進行中とはいえ、今年度の調査研究で貴重な新知見を得た。この研究課題申請当初から要望していた南部北上・岐阜県・近畿北西部・四国の上部ペルム系分布域でも野外調査を実施し、最終的にはこれら得られた資料を総括し、日本の上部ペルム系の有孔虫生層序を確立し、国際対比を試みたいと考えている。
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