研究概要 |
研究期間中に,北海道東部のテクトニクスについての考察に、進展があった。北の枝幸より北見地域の中新世北見火山岩類の野外調査ならびに試料採集は、予定通り角閃石含有安山岩について行われた。これらの火山岩類の全岩化学組成は、カルクアルカリ岩系の範囲でに落ちた。斑晶角閃石については、マイクロプローブにより化学組成を決定した。6配位のアルミニウムの値は約0.4で、火山岩から報告されている値の中では高いが、瀬戸内火山岩類よりは低い。Fe/Mg+Feは、ほぼ0.4で、母岩よりはFeに乏しい。弗素の量は1、100〜1、300ppmの範囲であった。これらの結果からは、瀬戸内火山岩類の角閃石と比較して、とくに際立った相違はなかった。結果として,北見火山岩類を瀬戸内火山岩類の延長とする証拠も見出されなかったが,その考えを否定するデータも出なかった。問題は、本研究者が網走海溝とした常呂帯より、東の部分である。屈斜路湖、斜里-標津線に沿って、中新世の火山岩類・第三紀花崗岩類が見出され、さらに根室黒鉱鉱床に加えてね第三紀の銅・鉛・亜鉛鉱脈が存在する。これらの地質は、明らかに島孤の存在を物語っている。考えてみると、常呂帯の変成度は東へ上昇しており、東への沈み込みを示唆している。北海道の東部に、常呂帯から東へ沈み込んだプレートに関連した島孤が存在したことは疑いない。これはオホーツク古陸としか考えられない。今まで幻の陸塊であったオホーツク古陸の端を捉えたのであろう。こうなると網走海溝説にも問題が出てきた。常呂帯の西側に湧別層群が分布している。この古流系は北からの軸流とともに、東からの側方流が知られており、オホーツク古陸からと考えられてきた。とすると、北海道主部とオホーツク古陸との衝突帯は、湧別層群の分布の西側、紋別と帯広を結ぶ線ぐらいに期待される。
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