研究概要 |
九州大学超高圧電子顕微鏡室に設置してある超高分解能透過電子顕微鏡を用いて2,3のアンチゴライト・カリオピライトの超構造の高分解能観察を行なった.今回実験に用いた超高分解能電子顕微鏡はSi-0,Mg-0などの結合距離に近い点分解能(0.17nm)を有している.今回得られたアンチゴライトの高分解能電子顕微鏡観察結果は以下の通りである. (1)実際に撮影できたHRTEM像の光学的フーリエ変換を行ってみると,ほぼ0.2nm-0.15nm程度の情報が得られていることがわかった.従来のHRTEMを用いた鉱物の研究では得られていない分解能で観察ができることが明らかになった. (2)今回検討した試料のように電子線損傷が激しい鉱物では撮影条件(焦点はずれ量)を変化させた一連の像を得ることが非常に困難であった. (3)c軸方向からの高分解能像は次の2つのタイプに区別される.第1のタイプは0.25nmの面間隔の連続的な(200)格子縞と不連続な(130)格子縞を示す物である.そして,(130)格子縞の食い違いは3.5nmの間隔で生じる.そのsupercellはM=6.5に対応する.第2のタイプは0.46nmの面間隔の連続的な(020)格子縞と不連続な(110)格子縞を示す物である.そして,(110)格子縞の食い違いは3.5nmの間隔で生じる. (4)上記の2つのタイプを解釈するためにマルチスライス法によってシミュレーション像を計算した.観察像との比較から原子分解能が得られていることがわかった. (5)c面心の空間格子をもつ新しい超構造が篠栗産アンチゴライト試料A1において確かめられた.これはM=(2n+1)/2のsupercellを示す物で真のX軸方向の周期は2倍で2Aとなる.そのC面心の超構造モデルはUehara and Shirozu(1985)が予想した物である. (6)大きなβ角をもつ(β=95゚)単斜晶系の1層構造の超構造がいわゆる"ピクロライト"試料S7(Uehara and Shirozu,1985)において見いだされた.
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