研究概要 |
本研究の目的であるガラス電極法に代わる新たな高精度pH測定法の開発について,平成5年度に装置の組立,その性能評価を行なった.平成6年度にはこの方法を海水試料に適用するための基礎的な条件検討を行なった. 本法ではpH指示薬の吸収スペクトルからpHを計算するために,使用したpH指示薬の酸性及びその共役塩基性種の吸収スペクトルを基準スペクトルとして測定しなければならない.しかし,チモールブルーの塩基性化学種の基準スペクトルを測定するためには,海水をpH1.2程度の強塩基性にしなければならない.しかし,このような条件では海水からマグネシウムが加水分解して沈澱するために,その吸収スペクトルを測定することが困難となる.さらに,海水のイオン強度の変化が基準スペクトルに及ぼす影響についても調査しなければならない.このような点について検討を行った. 基準測定スペクトルを測定するためには,海水と同程度のイオン強度に調整した塩化ナトリウム溶液またはマグネシウムを除いた人工海水を用いることで基準スペクトルを測定するが出来た.基準スペクトルの吸光度に対して,イオン強度の変化はわずかに影響を与えるが,いくつかの異なったイオン強度溶液で基準スペクトルを測定し,それを内挿することによって,測定試料のイオン強度に基準スペクトルの吸光度を補正することができる. 本法を人工海水を用いて調整した緩衝溶液のpH測定に適用した.その結果,本法によって得られるpH値は緩衝溶液の水素イオン濃度([H^+])にそのイオン強度における水素イオンの活量係数を掛けた値を示した.即ち,従来ガラス電極法では測定が困難であった海水の水素イオン活量([H^+]γ_<H+>)を,本法によって正確に測定することができた.
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