研究概要 |
アセトンやアセトアルデヒドなどの脂肪族モノカルボニルは一般に凝縮相低温個体ではその電子スペクトルは 4.2Kにおいてすら、極めて幅広いバンドしか与えないことはよく知られている。ヘクサクロロアセトンのT-S吸収やりん光スペクトル(文献 M.Koyanagi et al.,Chem.Phys.5,107(1974)参照)以外はだれも振動微細構造解析に耐えるようなスペクトル観測に成功していないその主な原因は共存不純物や他の理由による多くのサイトの存在、就中、光照射による不純物の生成とそれらに基づく不均一場広がりによるものと考えられる。 当研究は上の原因のうち、特に問題と思われる後者の影響を出来るだけ抑える目的で、4.2K冷媒中で 試料を光照射中に一定のスピード(約 5 mm/min.)で移動させるように計画された。部分的この目論見は成功し、アセトン結晶ではほぼ300〜400cm^<-1>の間隔を持つバンドが観測された。かなり大きな試料(50mmφ x 100 μm)を移動させることやバブルの問題などからくる信号のふらつきという技術的に克服すべき問題が残っているが、このperliminaryな研究によってある程度の見通しが得られたものと考えられる。この他、同様な手法を用いてヘキサクロロアセトン結晶のS_1←S_0吸収スペクトルの微細構造解析に初めて成功した。また、極低温におけるトルエンからベンジルラジカルの生成に至る過程の一連の研究、同ラジカルのスペクトル研究はホストの中に生成されたラジカルやそのまわりのホスト分子の形態の影響を調べる上で非常に貴重な情報を与えた。
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