研究概要 |
本研究は機能性などの特異物質を有する新奇化合物のX線解析を行い、その既知構造に基づいて、未知化合物の構造及び安定性を化学計算で予測する方法を開発・改良することを目的としている。本科学研究補助金が交付された平成5〜6年度は、購入したワークステーションに計算ソフトの導入・整備を行いながら、既知物質のX線構造解析を常時続けデータの蓄積を行った。この間、数個の物質に化学分子計算を適用したが実験結果をうまく説明できるものはなかなか得られなかった。その後、X線解析による既知構造データもかなり集まった。事実、平成5〜6年度では学術雑誌への論文掲載数は22報であったが現在では38報まで増している。現在、漸く計算と現実とをうまく合わせる経験的方法を取得しつつある。本研究課題の理論計算による未知物質の予測に関しては、以下の成果が得られたのでその概要を示す。 1)トロポロン配位子をもつ新奇超配位14遷移金属元素(Si,Ge,Sn)錯体に対して分子軌道計算を行い、その特異構造を理論的に証明した(ISNA-8,th International Symposium on Novel Aromatic Compounds,Brainschweig,Germany,1995)。 2)反応活性試薬であるアリルスズの分子内環化反応の遷移状態に関する計算を行い、立体選択的な特異反応を理論的に説明した。(第13回基礎有機化学連合討論会、平成8年11月)。 3)チアカレックス〔4〕アレーン類はある大きさのキャビティをもち、色々な分子をゲストとして取り込むことができる。結晶構造でもある大きさの溶媒を含む包接錯体であることが明らかとなった。分子の大きさ・形からゲストと成り得る分子の計算を行い、実験的に証明をした(第2回有機結晶部会シンポジウム、平成9年9月)。 4)弱い水素結合による分子会合を持つアズレノキノン類の構造解析を行い、二次元の網目結晶構造を明らかにした。7種の異性体があるが2個のみが会合を生成する。その理由を分子軌道計算により明らかにした(第2回有機結晶部会シンポジウム、平成9年9月)。
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