研究概要 |
過酸化ジアロイルの光分解の際に生じるベンゾイルオキシルラジカルを過渡吸収法を利用して直接観測することにより,これらのラジカルの絶対反応速度定数や活性化パラメータなどを求めることができる.本研究では,2-位または2,6-位に置換基を導入したベンゾイルオキシルラジカルの反応性を明らかにすることを試みた. 過酸化ジ(置換ベンゾイル)(X-BPO)の光分解で発生する置換ベンゾイルオキシルラジカルは一般に,500-800nmの長波長領域に幅広い吸収帯を示す.ところが,過酸化ジ-2-ブロモベンゾイル(2-Br-BPO)の光分解では,長波長領域とともに,400nm付近にも強い過渡吸収が観測された.この吸収はカルボキシルラジカルが2-位の臭素原子と相互作用して生成した臭素(III)中心ラジカルの吸収に帰属できる.また,2-Br-BPOでは,C-Br結合が光開裂することを分解生成物の分析により確認した. 過酸化ジ-2-アルキルベンゾイル(2-RCH_2-BPO;R=H,CH_3,C_6H_5)の光分解では,300-400nmの短波長領域に,ベンゾイルオキシルラジカルの分子内水素引き抜きにより生成したベンジル型ラジカルの吸収が観測された.これに対し,過酸化ジ-2,6-ジメチルベンゾイルおよび過酸化ジ-2,4,6-トリメチルベンゾイルから発生したベンゾイルオキシルラジカルでは,分子内水素引き抜きは進行せず,脱炭酸のみが進行した.しかも,2,6-位の置換基によりカルボキシル基がベンゼン環と共平面を取りにくく,脱炭酸が加速される傾向が認められた.これらの反応について過渡吸収の減衰速度の温度依存性を調べ,活性化パラメータを決定した.
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