研究概要 |
3価ホウ素はカルボカチオンと等電子構造であると考えられる。この観点にたちアズレン等電子構造化合物として、チエノ[3,4-d]ボレピン(1),チエノ[2,3-d]ボレピン(2)あるいはピロロ[3,4-d]ボレピン(3)を設計、合成し、諸性質検討から、以下のことを見いだすことが出来た。 1)反磁性環電流が発現していることから、上述の化合物は芳香族である。 2)1)の結果は同時に、ホウ素がπアクセプターとして作用していることを意味している。すなわち1a、2a、3aはホウ素を負末端とする双極子を持つ。 3)ケイ光スペクトルの溶媒効果から算出すると、1aと2aにおける励起および基底状態の双極子モーメントの差(μe-μg)はかなり大きい(--10デバイ)。 4)一方、一連の化合物吸収スペクトルは、(μe-μg)の値が大きく変化しても長波長シフトを示さない。即ち、青色光透過性を保持する。 さらにこれらの研究を基にし、NMRスペクトル、凝固点降下、蒸気圧浸透圧、X線構造解析によりジエチル(3-ピリジル)ボラン(4)を精査し、以下の結果を得た。 1)4は、ピリジン環窒素のローンペアーとホウ素からなる分子間配位結合により、溶液および結晶中で環状四量体を形成している。self-assembly現象である。 これらの結果を2個の論文を投稿中である。 また、ピロロ[3,4-d]ボレピン(3)の窒素アニオン体(ピロール環窒素のアニオン)については、前駆体として、窒素原子をシリコンで保護したピロロ[3,4-d]スタネピンをすでに合成することが出来た。 分子設計および分子軌道計算のためパソコンMacLIII 4MB/HD80を使用した。合成に際し、デジタルバキュームコントローラーを用いて目的物精製を行い、器具乾燥器は通常の使用をした。旅費、謝礼は以上の成果発表と討論のために用いた。
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