研究概要 |
本研究は、超不安定化合物チエピンおよびチエピンオキシドの性質を、合成的(母体および単純誘導体の合成)・理論的(非経験的分子軌道法)に、解明しようとするものである。 1.チエピン系遷移金属錯体のX線結晶構造解析:スルホン錯体3のX線構造解析に成功した。現在,チエピン錯体1,スルホキド体2のX線構造解析を進めている。 チエピン錯体4とTCNEとの付加環化反応:(チエピン)鉄トリカルボニル1は,配位子に含硫黄共役環を持つ極めて珍しい化合物であり,特異な反応性を示すことが期待できる。チエピン鉄錯体1はTCNEと容易に反応し,位置選択的に1,6付加体のみを定量的に生成した。(環状η^4‐トリエン)金属錯体とTCNEが,一段階で1,6付加する例は今まで知られていない。 単純チエピンの分光学的捕捉【極低温マトリクス光分解】:以下のジアゾ体の極低温(10K)光分解反応により,単純チエピンを初めて分光学的(IR)に,捕捉することができた。また分子軌道法(ab initi 3‐21G^*)による振動解析も,2‐エトキシカルボニルチエピンの生成を強く支持している。 この成果は,今夏ドイツで開かれる非ベンゼノイド芳香族国際会議(ISNA-8)で発表する予定である,
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