研究概要 |
1.1,8,9-トリス(フェニルセレノ)アントラセン(1)を合成するため、その前駆体となる1,8-ビス(フェニルセレノ)アントラセン(2)を、1,8-ビス(フェニルセレノ)アントラキノンから中程度の収率で合成する方法を確立した。2をn-BuLiと反応させたところ、n-BuLiがセレンを攻撃したと思われる生成物が得られた。現在種々の有機金属との反応を試みており、近日中に1が合成できるものと期待される。 2.1のモデル化合物としてナフタレン誘導体1-(MeSe)-8-(p-YC_6H_4Se)C_<10>H_6(3:Y=OMe,Me,H,Cl,Br,COOEt,NO_2)を合成し、そのNMRスペクトルを測定した。その結果、MeSe基の^<77>Se化学シフトはp-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトと良い正の相関性があり、^4J(Se,Se)の値は、p-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトとは、負の良い相関性があることが判明した。 3.2.と同様に、1-[8-(p-YC_6H_4Se)C_<10>H_6Se]_2(4:Y=OMe,Me,H,Cl,Br,COOEt,NO_2)を合成し、そのNMRスペクトルを測定した。その結果、Se-Se基の^<77>Se化学シフトおよび^4J(Se,Se)の値はともに、4のp-YC_6H_4Se基の^<77>Se化学シフトとは、負の相関関係にあることが判明した。4のSe-Se基の^<77>Se化学シフトは、3のMeSe基のとは逆の置換基効果を示しすという興味深い結果である。この場合、4と関連して、非対称のジセレニドの挙動に興味が持たれる。 4.分子錯体H_2SCl_2(MC)におけるSe-Cl-Cl結合を非経験的および半経験的MO法を用いて詳しく検討し、この結合が3c-4eで良く表現できることを論証した。 5.合成した有機セレン化合物の酸化還元電位を測定中であり、系統的な合成に伴って、成果が期待される。
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