研究概要 |
放射化学的手法を用いて測定したビスマスの光子(γ線)照射核分裂片の質量収率は,ほぼ同じ励起エネルギーになるα線を照射した場合の質量収率とほぼ同じ形であった。用いた光子(γ線)は,制動放射線のため,単一エネルギーではなく,従って,励起エネルギーも一定ではないが,この点を考慮しても,低エネルギー核分裂の過程は,光照射の場合もα線照射の場合もあまり差はないことが明らかになった。 インビーム法による光核分裂片の運動エネルギー測定は,散乱光子が検出器に入射するため,荷電粒子を入射する場合と同様の方法では因難なこと,特に角度分布の測定が因難なことが分かった。単一エネルギー光子による実験も可能であるが,充分な精度の結果を得るには一ヶ月以上の連続実験が必要なこと,一方,制動放射線を用いる場合は,充分厚い遮蔽が必要なことが分かった。従って,先に述べた結果もふまえ,低エネルギーの軽い荷電粒子を入射し,核分裂片の運動エネルギーの測定を角度を変化させて行った。どの角度の全運動エネルギー分布も,従来報告されているのと同様の分裂片質量依存性を示す事を確認した。 解析は,これまで報告のない,各分裂片質量毎の運動エネルギー分布の角度依存性に着目し継続中である。今までに明らかになった最も興味ある点は,全運動エネルギー分布に見られた分布の非対称性が,シングル(すなわち片方の分裂片)の運動エネルギー分布ではどの質量でも見られないことである。現在,なぜ対称なシングル2つのエネルギー分布の和である全運動エネルギー分布が非対称になるのか検討中である。また,非対称の全運動エネルギー分布を,対称な2つの分布の和に分解し,分裂片質量毎に,その角度依存性についても解析中である。
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