研究概要 |
抗癌活性白金錯体であるシスプラチン誘導体と生体内標的であるDNAとの相互作用を速度論的観点から追求した。白金錯体としてはシスプラチン,cis-PtCl_2(NH_3)(NH(CH_3)_2),PtCl_2(1R,2S,3S-3-methylcyclohexane-diamine)を使用した。以下にその結果を要約する。 (1)擬一次条件下で白金錯体とDNAの反応UVにより追跡した。non-leaving ligandの嵩高さが大きくなると反応速度の減少が観察された。 (2)double stranded DNAのimino protonのhydrogen-deuterium exchange rateを290nmの吸光度変化により追跡した。この重水交換速度はDNAが白金錯体で修飾されると促進されることがわかった。しかしながら、重水交換に伴う吸光度変化は速度定数を決定するにはあまりにも小さすぎた。 (3)白金錯体のDNAへの結合により生じる296nm/267nmの吸光度比は白金錯体のDNAへのchelationの速度を反映することがわかった。 (4)DNAと白金錯体の付加物を酵素分解・HPLC法で研究した。隣接GGとの付加物、隣接AGとの付加物、グアニン塩基との付加物などの同定・定量を行った。C_2対称性を欠いた白金錯体の場合はGGおよびAGとの付加物にジアステレオマ-が生じる。このジアステレオマ-の分離定量を行った。 (5)AG、GG配列を含むオリゴヌクレオチドを合成し(12mer程度)、白金錯体のこれらの配列への結合選択性を調べた。GGとの付加物はAGとのそれより10倍程度優位であった。 (6)上の反応で生じたジアステレオマ-の構造を高分解能NMRを使って明らかにした。
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