研究概要 |
遷移金属イオンを含むM‐SH基は、生物、固体触媒、鉱物系におけるレドックスや物質変換に重要な役割を演じているにもかかわらず、その反応性に関する研究は、有機メルカプタンR‐SHのそれに較べて極端に少ない。本研究で、架橋SH配位子を持つ二核錯体、[{RhCp^*(mu‐CH2)}2(mu‐SH)]C1が、末端M‐SH基を有する錯体や、R‐SH基を有する有機メルカプタン類には例のない酸化反応(式1)を示し、生成物として、中性のS_4配位子 2[Rh_2Cp^*_2(mu‐CH_2)‐(mu‐SH)]^*+H_2S+3/2O_2→[{Rh_2Cp^*_2(mu‐CH_2)_2}_2(mu_4‐S_4)]^<2+>+3H_2O(1式)を持つ珍しい四核錯体[{Rh_2Cp^*_2(mu‐CH_2)_2}_2(mu_4‐S_4)]X_2(Cp^*=eta^5‐C_5Me_5,X_2=Cl(OH)(1a),X=BF_4(1b)を与える事を見出した。この反応は3電子酸化で進行する。H2^<34>Sを用いて^<34>S同位体異性体も合成した。生物の精製・分離は設備備品費で購入したフラクションコレクターを供えたHPLC装置で行った。単結晶X‐線構造解析、共鳴ラマン測定(1aの^<34>Sと^<32>S同位体異性体)そしてab initio法分子軌道計算により、生成物の構造、結合の性質、電子状態を明らかにした。カチオン部分の骨格を図に示している。S_4ユニットはD2h対称を持つ長方形をしており、1.5重結合の短いS‐S結合(1.98Å)と1重結合よりもっと長いS‐S結合(2.70Å)の二種類を持っている。またS_4ユニットはほぼ中性であることが分かった。
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