研究概要 |
我々は、(DPG)_2Mの色調に与える長鎖導入の効果について研究した。長鎖をコアー錯体の(DPG)_2Mの周辺に導入すると、長鎖のflexibilityがディスコティックカラムナ-液晶性を発現させるだけでなく、周辺の長鎖同志がそのvan der Waals力によってコアー錯体部分を締め付け錯体の色調が変化することを見い出した。この長鎖同志の隣接相互作用は、あたかも高圧を加えたような効果がある。そこで、我々はこの効果を「目に見えるファスナ-効果」と名付けた。その見かけの圧力は35℃、大気圧下において、(C_<12>O)_8-Ptで約0.87GPaであった。そしてそのファスナ-効果は(C_nO)_8-Ptでは、アルコキシ基の炭素数nがn≧12あたりで飽和状態に達する。嵩い配位子と小さなイオン半径のPtを中心金属にもつこの(C_<12>O)_8-Ptは、金属間がルーズであり、(C_<12>O)_8-Ni、Pdより大きくd-pバンドがブルーシフトし顕著なサーモクロミズムを示した。このような「目に見えるファスナ-効果」は我々が知る限り今回がはじめてである。このことは、有機金属錯体液晶の新規な応用の可能性を示すものである。このように、様々な長さの長鎖置換(DPG)_2M(M=Ni,Pd,Pt)を合成することによって、中心金属の一次元鎖構造がこの液晶性サーモクロミズムの発現に大きく影響を与えていること明らかにした。(DPG)_2Mに金属の一次元鎖構造を保持したまま長鎖を導入できたことは、分子間の締め付けに関して大変意義深いと我々は考えている。なぜなら、このファスナ-効果による締め付けによって長い間、加圧という外的要因を必要とする状態でしか得られなかった超伝導性化合物を大気圧下でその超伝導性を期待できる可能性を初めて明らかにしたからである。
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