研究概要 |
pi共役有機高分子と遷移金属錯体を融合した系、“pi共役遷移金属錯体高分子"においては、pi共役系がd軌道と多様な電子的相互作用をすることにより、ユニークな物性を発現することが期待される。本研究では大別して2つのpi共役高分子錯体の合成法を開発し、それらの電子物性、光物性について研究した。以下にそれぞれの概要を述べる。 1)可溶性ポリフェニレン、ポリインデン、ポリフルオレン誘導体を配位子とする遷移金属pi錯体。 eta^6‐配位またはeta^5‐配位のpi配位子であるベンゼン、インデン、フルオレンを一次元に長く連結したpi共役高分子は、pi結合によって遷移金属と融合させることができる。本研究ではn‐ヘキシル基を導入した可溶性ポリフェニレン、ポリインデン、ポリフルオレン誘導体を電解合成し、さらにそれらを用いる均一系反応によって、(arene)FeCp,(indeny)RhCp^*,(fluoreny)Mn(CO)_3,などのレドックス機能をもつ遷移金属錯体ユニットを含む系を構築した。いずれの系においても錯体ユニットに基づくレドックス特性が現われ、幾つかの系においては、錯形成に伴う導電率の上昇、吸収スペクトルの吸収端の長波長側へのシフト(バンドギャップの減少)、発光スペクトルの波長と強度の変化が観測された。 2)ジアセチレンの連続的メタラサイクル形成反応によるコバルタシクロペンタジエン高分子錯体の合成。 ジエチニルベンセン類の[CpCo(PPh_3)_2]への二連続的メタラサイクル形成反応によって、ポリアリレンコバルタシクロペンタジエニレンフェニレン類を合成した。これらの新規高分子のバンドギャップは2.1‐2.3eVであり、低温でのCVにおいては、準可逆な酸化波と殆ど不可逆な還元波を示す。単核錯体と比較すると、その酸化電位はほぼ同じであるが還元電位は貴側へシフトしている。またこれらの高分子錯体は溶媒に不溶であるが、Cp環にn‐ヘキシル基を導入した錯体原料[(hex‐Cp)Co(PPh_3)_2]を用いることによって、可溶性の高分子錯体を得ることができた。
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