研究概要 |
本研究では、混合原子価複核錯体における混合原子価状態中での電子の非局在化の過程を調べる方法を確立することを目的とし、β-ジケトナルテニウム単核錯体の電解共鳴ラマンスペクトルを測定し、ルテニウムの酸化状態とルテニウム-酸素(β-ジケトナト)の伸縮振動との関係を検討した。 1.β-ジケトンとしてアセチルアセトン(2,4-pentanedione;Hacac)及びジピバロイルメタン(2,2,6,6-tetramethyl-3,5-heptanedione;Hdpm)を選び、電解共鳴ラマンスペクトル測定用試料として[Ru(acac)_n-(dpm)_<3-n>]の一連の錯体を合成した。又、比較として、鉄錯体の系列の合成を行った。 2.電解しながら電子スペクトルを測定するための電解セルを作製し、各錯体の電子スペクトルを測定して共鳴ラマンスペクトルの共鳴条件の検討を行った。その結果、アルゴンイオンレーザーによる励起波長(514.5nm)を用いれば、Ru^<II>,Ru^<III>,Ru^<IV>の何れの錯体においても前期共鳴ラマン散乱することがわかった。 3.電解しながら共鳴ラマンスペクトルを測定するための電解ラマンセルを作製し、各錯体の共鳴ラマンスペクトルの測定を行った。その結果、金属-配位酸素原子の伸縮振動はRu^<II>→Ru^<III>→Ru^<IV>と変化するに従って、高波数側にシフトすることを見いだし、これを指標とした金属の酸化状態を知るための尺度を完成した。この結果は、現在論文投稿準備中である。 4.複核錯体[(dpm)_2Ru(OCMe_2C(-C〓C-)_2C(MeCO)_2Ru(dpm)_2]の単結晶を合成したが、良好な結晶が得られず、測定したX線回折データでは構造解析が行えなかった。 現在、複核錯体の単結晶の調製、電解電子スペクトル及び電解ラマンスペクトル測定を継続中である。
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