研究概要 |
親水性の高分子であるポリアクリルアミドにフタロシアニン(Ph)の金属錯体(Ph-Co,Ph-VO,Ph-Cu)をアミド結合した高分子を感応素子とする電極を作製し,AN,PC,DME,NMP,DMA,およびDMFの六種の非プロトン性溶媒中で,この電極の種々陰イオンおよび陽イオンに対する電位応答を調べ,AN,PC,DME,NMP,DMA,およびDMF中のF^-およびCN^-に対してネルンスト応答を示す電極を見出した。この結果にもとずいて,F^-およびCN^-がつくる化合物の溶解度を求める研究に応用し,ANおよびPC中のNaF,BaF_2,LiCNの溶解度積定数を求めた。次にこれら電極の電位応答を理解するため,可視・紫外吸光光度法およびサイクッリクボルタンメトリーによる研究を行ない,電位応答機構の考察を行なった。これらの研究成果の一部は日本化学会第65春季年会(東京),予稿集I,P.52(1993),および,第39回ポーラログラフィーおよび電気分析化学討論会(熊本),予稿集,p.73(1993)で発表した。 つづいて,非水溶媒中でCa^<2+>用に使用できるイオンセンサーを開発するため,PAA-B15C5を感応膜とする電極を構成し,PC中のCa^<2+>およびNa^+に対してネルンスト応答することを確認した。これに基づいて,PC中のCa^<2+>とDMF,NMP,DMA,DMSO,およびHMPAなどの各溶媒分子との逐次錯生成定数を求め,さらにそれらの値を用いて,PC中のCa^<2+>が上記溶媒中へ,あるいはPC中のCa^<2+>がPCとそれら溶媒との混合溶媒中へ移行する際の移行ギブズエネルギーを求めた。これらの値は,これまでどのような方法によっても得ることができなかったものであり,既知の値が得られているNa^+について同様な実験を行ない,今回得られた値とを比較して,開発した電極がこれらのデータを得るのに有効であることを補完した。これらの研究成果は日本分析化学会第42年会(広島),要旨集,P.271(1993)で発表した。
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