研究概要 |
クロマトグラフィの分離プロセスは,基本的には分配,拡散等の現象を応用したものであるが,その分離特性は事実上使用するカラムの性質によって固定されており,ある一つのカラムにおいては,移動相の組成や温度の変化をのぞいて,分離特性の大幅な変化は望めない。このため,我々は,クロマトグラフ分析法に新たな制御パラメーターと自由度を与える目的で,電場制御型のクロマトグラフィを開発してきた。この新しい方法では,カラム充填材料に電導性をもつ多孔質粒子を選び,電場による細孔内へのイオン補そくを利用して,物質を分離する。今年度の研究により,イオン性物質の保持時間,分離能を固定相に与えた電位により制御することが可能となり,従来固定されていたカラムの性質を,電位により強制的に変化させることが可能となった。 今年度の研究では,特に,固定相表面に化学修飾を行い,分離対象の多様化および高選択的分離を試みた。具体的には,(1)電導性高分子を被覆したカーボン粒子を固定相として,陰イオンの電位制御分離を試みた。また,(2)これまで検討してきたイオノフォアを利用した電位制御クロマトグラフィーをさらに発展させ,電位による分離の最適化を検討した。すなわち,固定相の電位としてさまざまな時間関数を検討し,分析条件の最適化を研究する。この点に関しては特に矩形波を連続的に固定相に与え、パルスの上限,下限電位およびduty比を変化させることで陰イオン試料の保持時間および分離度を変化させることが可能となった。
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