研究概要 |
ジーンターゲッティングを用いてマウス第II染色体上のp53遺伝子座にneo-tkカセットを標的導入した胚幹(ES)細胞を確立し,染色体の相同組換えに関与する一連の現象を解析した。成果として、二段階のジーンターゲッティングを施し、遺伝子置換を普遍的に行ない得ることを実際に証明した。さらにこの過程で予期されなかったジーンコンバージョンによる偽相同組換え体が、25%程度の頻度で必ず付随して得られることを示し、また、野生型アリル(W)とneo-tkアリル(T)をもつヘテロ接合体(W/T)ES細胞において2つのアリル間で両方向に、しかも再現性よく組換え修復が生じることも明らかにし、すでに本年度、発表した(Gondo et al.BBRC,1994)。 組換え修復の機構として、[1]比較的限られた領域での除去修復タイプのジーンコンバージョン、[2]相合染色体のDNA複製後の染色分体(sister chromatids)間の相同組換え、[3]単一親由来の二染色体性(uniparental disomy)にみられるような染色体不分離によるホモ接合化、の3仮説を提唱した。この検定のためには、全領域にわたって多型度の高いF1交雑マウス由来のES細胞株を用いればよい。そこで、CBA近交系マウスとC57BL/6近交系マウスのF1胚由来のTT2細胞株を用いて、新たにneo-tkカセットをp53遺伝子座に標的導入し、すでにW/Tヘテロ接合体となったTT2ES細胞株を17株独立に単離確立した。また、TT2ヘテロ接合体においてp53遺伝子座と連鎖し、遺伝的多型を検出できるSSLPマーカーの検討を始め、すでに4対が利用可能であることを確認した。 この系によって、哺乳動物細胞における遺伝的組換えを限られた領域で詳細に、かつ、分子レベルで解析することが可能となり、現在、さらに多くの多型マーカーを揃えて研究を進めている。
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