保護上重要な植物が多数生育する小貝川の河畔林の林床における光利用性とその空間的・時間的不均一性を把握し、河畔林の存在が草本植物の多様性に及ぼす影響を評価した。すなわち、(1)林床の光利用性の空間的、季節的パターンの詳細な調査、(2)それにもとづく、光利用性と林床植物の分布およびフェノロジーとの関係の分析、および(3)林床と伐採跡地の双方に生育する絶滅危惧種マイヅルテンナンショウの成長および形態形成と生育ミクロサイトの光利用性の関係の分析を行った。 林床の草本層上の高さにおける相対光量子密度は高木層の展葉にともない4月上旬までのおよそ60%から5月下旬以降のおよそ20%へと急速に低下し、それにとともに空間的なばらつきの程度も変化した。しかし、夏期の林床の光利用性が比較的高いことが春植物のほか、絶滅危惧植物を含む多くの夏植物の生育を許し、高い種多様性の一つの要因となっていることが示唆された。 河畔林の林床および伐採跡地に生育するマイヅルテンナンショウ110個体を選び、生育ミクロサイトの光環境および根元直径、草丈、葉面積、球茎重量を個体ごとに測定したところ、性表現とバイオマス蓄積との間には明瞭な関係があり、葉面積や草丈などの形態的特徴も、生育ミクロサイトの光利用性に大きく規定されていることが示された。
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