研究概要 |
本研究は,(1)自然湖沼である仁科三湖(青木湖,中綱湖,木崎湖)において,環境を異にする湖岸に定点を設定し,定期的にサンプリングを行い,出現するミジンコ類の種ごとの生態を明らかにする,(2)日本列島の広い地域からサンプリングして分布状況を明らかにする,の二つを目的に計画された.(1)に関しては,設定した湖岸の定点に出現したミジンコ類の季節的な変動がほぼ把握され,また沖合いと沿岸に出現するミジンコ類の種の相違が明らかとなった.(2)に関しては,北海道北部から九州南部まで,主要な自然湖沼沿岸部でのサンプリングをすることができ,日本列島における沿岸性ミジンコ類の出現する種とその分布に関してまとめることが可能となった.また,別途研究費(日本学術振興会国際共同研究,研究代表者谷田一三大阪府立大学助教授)を使用して,同様の調査をロシア極東地方の湖沼において実施し,日本列島の枝角類の分布と比較して考察することが可能となった.3年間にわたるサンプリングによって採集された標本の一部はすでに検鏡を終えているが,まだ多くの標本の検鏡はこれからの仕事として残されている.これまでに同定された種に関しては,データーベースを作成するためパソコンへのインプットを行っている.現在日本列島には85種のミジンコ類が分布しているが,本研究においてその大部分は沿岸性ミジンコ類であることが明かとなった.また,ロシア沿海地方湖沼のミジンコ相とはかなり異なったミジンコ相をもつことも明らかになりつつある.これらミジンコ類の分類,分布,生態に関して,本研究で得られた成果とこれまでの知見を加え,「日本産Cladoceraに関するノート」としてまとめ,その一部はすでに公表し,また順次公表してゆく予定である.
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