研究概要 |
植物の生殖成長開始時点が、生殖成長に及ぼす効果を解析する目的で、早生アズキを材料とし人工気象室を用いて、人為的に栄養成長期間を変化させた4系列の成長実験を行なった。各系列(S-1,S-2,S-3,S-4)の栄養成長期間は、それぞれ、65日、53日、42日、31日であり、栄養成長から生殖成長への切り替え刺激は、日長を16時間から10時間に切り替えることで行なった。成育条件はホグランドNo.2を培養液とした礫・水耕で、気温は明期25℃、暗期23℃、湿度は40〜50%であり、CO2濃度は360〜1000ppmの間を変動した。光条件は植物体上部で500mumolとした。 栄養成長期間が65日のS-1および53日のS-2では、切り替え後直ちに花芽の形成が始まり、5日後には開花・結実が観察された。しかし、S-3では開花までに約30日、S-4では約60日を必要とした。 切り替え時点から約一カ月後の生殖・繁殖器官(R-part)の生産量は、S-1では切り替え時点の栄養器官(P-part)量の約45%、S-2では約15%、S-3とS-4ではほとんど0%であった。 S-1,2では切り替え後の葉の老化が著しかったが、S-3,4では葉面積成長は低下をしたが老化は目立たなかった。切り替え約一カ月後に放射温度計により測定をした光照射下での葉温の分布は、S-2が25〜30℃であったのに対して、S-3は18〜23℃、S-4は18〜20℃であり、S-2の葉の機能の低下が示唆された。 単位葉面積当たりの葉乾重(SLW)は切り替え後上昇傾向を示したが、S-3,4では特に著しい上昇を示し、葉内に物質が蓄積していることを示唆した。 これらの結果は、栄養成長の期間長が、生殖成長の初期値を決めるだけではなく、生殖成長期の物質生産状況に大きく影響する可能性を示唆した。今後は、切り替え刺激等の実験条件を改善し、より一般性のある成果を追求する必要がある。
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