研究概要 |
細胞活動は絶えず合成と分解が動的な平衡関係によって維持されている。タンパク質の細胞内分解経路としてはユビキチン経路とリソソーム(液胞)経路とが知られている。最近我々は酵母の液胞に於ける分解が高等動物の自食作用と同様な機構によることを明らかにして来た。本研究は液胞内での分解-自食作用がいかなる機構によって誘導されるか、また液胞内の分解はいかなる生理的役割を担っているかについて、タンパク質分解を定量化することを通じて明らかにすることを目的とした。 本年度の研究によって得られた主な成果は以下の通りである。 (1)自食作用不能株(apg1-15)、タンパク分解酵素欠損株、液胞欠損株などを用いて、放射性アミノ酸標識細胞のタンパク分解における自食作用の寄与を明らかにした。 (2)PMSFを用いることにより野生型酵母の液胞内タンパク質分解を定量化し、栄養飢餓下に誘導されるタンパク質分解が細胞の生存率の維持に必須の役割をもつことを示した。 (3)自食体の液胞内分解に欠損をもつ変異株を系統的に分離し、4つの変異abd1-4を同定した。abd1,2,3はそれぞれ液胞膜H^+-ATPaseの構成サブユニットをコードするVAM遺伝子の変異であった。自食体の分解にはH^+-ATPaseが必須である。
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